速水林業の森林経営

森林施業の基本方針1

  • 速水林業 経営森林の状況

     

  • 人工林の現況と今後の取り扱い
    尾鷲林業地帯の山林はケツ岩、砂岩の中世層と石英斑岩の火成岩地帯により構成され、地味は痩地にして収穫量は全国的に見て下位にあります。故に普通材の量的生産では経営の存続は困難であり、高品質材の生産を目的としてきました。

    速水林業の人工林は18齢級までおおむね法正林型となっています。今後は従来の施業方法に従うと共に、林地の状況に応じて適切な施業をしていくものです。今までは優良柱材の収穫を主体としてきましたが、木材需要が大きく変わり、節が少ない、無節などの柱需要は激減し、速水林業が最も得意とした12㎝角の化粧柱(役物)用の丸太の販売は難しくなりました。そこで綺麗な造作材用の板を挽ける長さの丸太、あるいはすでに需要がなくなったと思われていた足場材形状の牡蠣養殖筏用の丸太などが生産されています。それとは別に丸太の末口が60㎝以上になる大径材の収穫を目的とした超長伐期の林分の造成に努力します。すでに100年以上の林分は100ha以上になっています。

    施業に関しては、細い丸太を早期に大量にとるための30年ほどの伐期設定で1万本/haの植栽密度や3,000本/haの密度で長伐期を目指すなど搬出の利便性など考えながら多様な施業を行っています。特に下刈りは可能な限り行わないこととして植栽後は2回から3回で仕上げるように努めています。
    林内に広葉樹を誘導育成し、必要以上の下刈りを避けることなどで植生の多様性の確保に配慮します。除間伐は単に木材生産の密度管理のみを考えるのではなく、下層植生の維持にも配慮して実行します。

 

  • 広葉樹林の今後の取扱

    広葉樹林は萌芽性薪炭林であるため、純粋な原生的林相とは異なるといえます。現在、これらの広葉樹林において施業は積極的には行われておらず、自然の状態になっています。

    広葉樹林は97haが19林班にあり、森林管理に必要な林道は既に自力開設が完了しており、環境面と林分の状況を配慮し、経済の状況もかんがみて管理を考えます。

    将来、広葉樹用材としての経済的価値が生まれる可能性がある林分に関しては、積極的に育成天然林として管理していく計画です。その他の天然林はバルブ用材として育成していく計画です。 

    なお、施業計画初年度の平成12年に、これら広葉樹林のうち約60haを将来の地域の原自然条件の回復を考慮した生態保護林として19林班に指定しました。

 

森林施業の基本方針2

  • 伐期齢の決定と収穫

    ヒノキ林分の大部分は間伐によって良質の構造材用小中径丸太を収穫し、皆伐時に高品質の造作材・集成材用大径丸太を収穫することを目的として施業してきましたが、前述のように高品質柱材と言われた節の少ない尾鷲ヒノキの高樹齢のヒノキは柱のしたときに艶もよく高価格で取引されたが、阪神淡路大震災などをきっかけに住宅建築が柱を表に出さない建築が増えて、美しい柱の需要が激減しました。そのために速水林業も今までの生産目標の一部を変えて、隠された需要としての足場丸太形状の牡蠣養殖用丸太生産が可能になる高密度植栽、30年程度の伐期なども取り入れるように考えている。全体の樹齢は延びており100年以上の林分も100ha以上となり、人工林の12%以上になっているが、太めの柱の需要が激減している現在、この手の高樹齢に林分の皆伐は再造林コストを考えると間伐で管理していきたいと考えています。もちろん木材のカスケード利用を目標として、枝葉も含めて木材製品にならない木材はバイオマス発電の燃料チップやヒノキオイル生産のチップ生産用に販売している。

    結果的には伐期は林木が需要に対して目的とする生産材に最も適した径級に到達した時期を考慮して決定することにしています。林地は急峻で中世層が大部分をしめ、表土が浅く林地により肥痩の差が激しいため、同齢林においても径級の差が著しく、樹齢をもって伐採適期を一律に定める事は大変困難であり、経営上の不利益をまねく場合が可能性が高いと思われます。ゆえに施業計画の策定にあたって林地ごとに林況を勘案し、おおむね20年から200年の幅の広い伐期を定める事にしました。


    伐採経費は前年度比91%に押さえる事が出来ました。
    なお皆伐時は環境に配慮し、搬出作業や再造林時の苗木の健全な育成を阻害しない限り、林内に多様な植生を残します。また小河川に表土が流れこむ事を防ぐため、常水のある河川に対しては緩衝帯の役割をする林を河畔に残すなどの配慮をします。

  • 育林

    育林費用は海外との対比や現在の木材価格、特に森林所有者の所得になる立木価格は再造林を極めて困難なものとなっており、今までの発想の育林では林業の持続性は不可能となっています。速水林業では手抜きではなく合理化を進めてきた。一人当たりの植栽本数を増加させ、下刈りを早期に切り上げるための初期成長の早い性質を持った苗木を自社内生産を行い、コストダウンに努めました。


 

・ 森林施業の基本方針3

  • 労働

    林業就業者の減少と高齢化がすすむなか、労働力の多寡が将来、作業計画の成否を決定する可能性が大きいと考えられます。速水林業では、作業員の技能の向上が重要と考え、養成を図っています。一時期29名に上った作業員は自然減を利用し、現状は16名となっています。

    現在、常時雇用の現場作業担当従業員14名と管理担当従業員2名を合わせて、所有する免許、資格等は多数で、速水林業の従業員は熟練技能集団といえます。また全員がグリーンマイスター、グリーンワーカー、ニューワーカー等の養成の講座終了者です。施業計画をはじめとする多様な情報を、作業現場と経営側が共有することによって、より一層の知識と技能を持った集団に育っていくと思われます。

    特に材価の急激な下落は雇用の維持を困難にしていますが、現在の速水林業の従業員はそれぞれが木材価格を熟知して、搬出の生産性や造材のやり方を工夫し。牡蠣の養殖筏用材などは従業員自らが遠方の現地に出かけて営業と価格交渉まで行えるようになっています。造材も木材市場に丸太を出すのは避けて極力直接製材工場に販売する努力を従業員自身も怠りません。

    作業種は植林、下刈、林内掃除、除伐、伐採、枝打ち、搬出、運搬、林道管理、管理等多岐にわたります。作業員が単純労働ではなく多種類の作業に携わり、自己の労働に変化を求めつつ、人問性豊かな活気ある森林労働に従事出来るように配慮しています。


  • 安全管理

    林業における作業は、足場の悪い傾斜地で行う場合が多く、現場ごとに作業条件が大きく異なること、チェーンソー等の刃物を使用すること、重量物を扱うことなど、災害の発生を招きやすい要素を抱えています。それゆえ、林業経営を考える中で、労働災害の防止は重要な項目です。

    速水林業では安全管理主任を置き、各作業単位に班長を指名し、これらの担当を安全管理者として安全の確保に当たっています。また、安全管理面において重要な要素である作業の機械化を積極的にすすめます。作業用道具や服装等、身の回り品の改良も行っています(写真1、2)。

    新人には簡単に作業が理解できるような作業マニュアル(安全手順)を作っています。またベテラン作業員にも、安全会議を通じて作業能力を向上させるための注意を伝えています。
    >> 安全手順(速水林業の施業ノウハウ) (PDF)

    労働災害防止のもう一つの重要な要素は、従業員の意識改革と精神的安定です。速水林業では、毎朝のツールボックスミーティングや年に2回の全員参加による安全大会(写真4)を開催して意識改革に努めています。従業員の精神的安定に繋がるとして体調やチーム編成等充分に配慮しています。また、経営管理を担う従業員は積極的に現場に赴き、気の緩みや危険作業の防止を指示し、作業や機械の改良の可能性を検討しています